白リン弾(はくリンだん)とは、手榴弾、砲弾、爆弾の一種で、充填する白リンが大気中で自然燃焼すると吸湿して透過性の極めて悪い五酸化二リンの煙を発生させることを利用した、煙幕発生装置である。限定的な照明効果および焼夷効果を持つ場合もある。かつては、白リンそのものの毒性を利用した化学兵器の研究も行われたが実用化できなかった。
陸上自衛隊では、白リン弾を発煙弾としてのみ装備している。白リンの英名White Phosphorusの頭文字をとってWP発煙弾とも呼ばれる。 英語圏では白リンと黄リンが共にWhite Phosphorusと表記されるため、日本語訳する場合には白リン発煙弾と黄リン発煙弾の二種類の訳が存在する。
アメリカ陸軍ではWP、Willy(ie) Pete(ウィリー・ピート)またはWilly(ie) Peter(ウィリー・ピーター)と通称される。 発生する煙は赤外線センサーを妨害できないため、先進国では赤リン発煙弾に更新され旧式化している。
白リン弾の構造
信管が作動すると炸薬が爆発し、白リンを粉砕しながら弾殻を破裂させる。飛散した白リンは水分を含んだ空気と反応し五酸化二リンを生ずる。
P4 + 5 O2 → P4O10五酸化二リンは大気中の水分と反応してリン酸になる。
P4O10 + 6 H2O → 4H3PO4白リン弾の砲弾
M110 155mm WP弾(w:en:M110 155mm Cartridge) 全長:70cmcm 重量:44.7Kg 充填物:白リン7Kg 射撃の動画 外見は通常の砲弾とほぼ同じ形をしているが、通常の砲弾と区別するために白地に黄色い線が引かれている。弾殻は金属製で中空の一体成形で、通常は弾頭に信管を装着するネジ穴があけられている。内部には白リンが充填されており、その中心を貫通するように炸薬筒が内蔵されている。炸薬にはTNTが用いられるほか、テトリルやオクトーゲンが採用されることもある。 M825A1 155mm WP弾 時限信管を使い空中で炸裂させることで116個の子弾を放出する発煙弾。子弾は燃焼して煙を発しながら落下する。イスラエル軍がガザ侵攻で使用したのはこの砲弾とされている。白リン弾の爆弾
1921年にウィリアム・ミッチェルが行った戦艦アラバマ (BB-8)に投下される白リン爆弾の実験第一次世界大戦後から、航空機用の焼夷弾や発煙弾として白リンを用いた爆弾が使用されるようになったが、現在は焼夷弾としてはほとんど用いられていない。
白リン弾の迫撃砲弾
中央が81mm迫撃砲のM375A2白リン弾 81mm白リン弾 アメリカ軍では各種迫撃砲弾の発煙弾が第二次世界大戦から現在まで多用されてきた。 煙を見て着弾地点を観測したり、煙幕を張るために使用される。60mm迫撃砲M224
M302A1白リン弾
M302A2白リン弾
M722白リン弾
81mm迫撃砲M252
M375白リン弾
M375A2白リン弾
M375A3白リン弾
M30 107mm迫撃砲
M328A1白リン弾
120mm迫撃砲M120
M68白リン弾
M929白リン弾
ロケット弾 アメリカ空軍が2.75インチ白リンロケット弾を保有している。広範囲に煙幕を張る目的で連装ロケットランチャーで運用されている。白リン弾の手榴弾
白リン弾の発煙手榴弾
詳細は手榴弾を参照
現在アメリカ陸軍で使用されている多目的手榴弾の形状はやや太い円筒状で、若干下部が絞られている。焼夷、発煙両方の目的に使用される。外殻はプラスチックおよびファイバーで作られており、白リンの量は約425g、全体では約680gの重量がある。半径17m程度の範囲に破片を飛散させるが、この手榴弾における平均的な投擲距離は約30mとされ、効果範囲内にいる人員は遮蔽物の陰などに身を隠す必要がある。
M15白リン手榴弾(M15 White Phosphorus Grenade) 第二次世界大戦時に使用されていた。すべて退役してM34に更新されている。 内容物:白リン15オンス 信管:M206A2信管 重量:31オンス 効果半径:17メートル 燃焼時間:約60秒 M34白リン手榴弾(M34 White Phosphorus Grenade) ベトナム戦争のころから2007年現在まで使われている。白リン弾の焼夷手榴弾
詳細はサーメートを参照
テルミット反応を利用した物が主流で、リンを使用したものは無い。華氏4000度?5000度の高温で燃焼するとされるのはテルミット弾で、リンの燃焼ではこれほどの高温は発生しない。
白リン弾の発煙弾発射機
戦車や装甲車などに搭載されている発煙弾発射機で使用されている。 自衛隊では74式戦車まで白燐発煙弾を用いていたが、90式戦車からは赤外線誘導兵器への妨害効果のある赤燐発煙弾に変更されている。 陸上自衛隊が毎年実施している総合火力演習でも観客の前で煙幕展開が実施されているが、現在までに健康被害の報告は無い。
白リン弾の歴史
ガザ侵攻 (2009年)で使用された白リン弾の映像、アルジャジーラニュース.[3]白リンを充填した砲弾の歴史は第一次世界大戦以前まで遡れるとされる。発煙弾や照明弾、焼夷弾に使用する目的で開発された。現代でも普通に使用される兵器であるが、焼夷弾としては、手榴弾を除いてほとんど使用されていない。
1899年にハーグ陸戦条約が採択されたが、白リン弾は制限されるべき兵器とは解釈されていない。
1914年からの第一次世界大戦時、白リンそのものの毒性を利用することを目的として、粉末状にして散布できないかという研究が行われたとされるが、短時間に自然発火・燃焼し五酸化二リンとなる点、ガスではないためすぐに地表に降下してしまい、広範囲へ一定時間以上散布するのが難しい点などが問題となり断念された。現在に至るも上記の問題点は解決されていない。
1939年からの第二次世界大戦でも広く使用された。また、アメリカ軍が沖縄戦において塹壕やトンネル、洞窟等に潜伏する日本軍に対して、熱と煙で燻り出すという目的に使用している。
1997年4月に化学兵器禁止条約 (CWC) が発効したが、白リンは対象に含まれない。
2005年にイタリアのテレビ局RAIが米元兵士のインタビュー番組において白リンを使用した兵器について触れ、これをBBCが世界的に配信した。RAIは「白リンを使用した兵器は(化学兵器禁止条約が禁止する)化学兵器に該当するのではないか」として国連化学兵器禁止機関 (OPCW) を取材した。同機関のスポークスマンであるPeter Kaiserはこれを否定したが「もし白リンの有毒性が明確に兵器利用されているのであれば、もちろん禁止されているものとなります。なぜならば、条約の成立趣旨そのものが適用されるのであれば、どんな化学物質もその化学作用によって人や動物に危害や死を招くものであれば化学兵器とみなされるからです」と述べた。
イラク戦争においても使用され、アメリカ軍のBarry Venable中佐は白リン弾を焼夷兵器として対人使用したと証言している。
白リン弾の運用に関する議論
2004年11月のイラク、ファルージャにおけるアメリカ軍の攻勢や、2009年のイスラエルによるガザ紛争に際して使用された白リン弾を「激しいやけどをもたらす非人道的兵器だ」として規制を主張する意見、それに対する反論が現れた。
| 規制すべきであるとする主張 | 必要ないとする主張 |
|---|---|
| 白リン弾は深刻な火傷をもたらす非人道的兵器である | 通常の化学火傷以上の「深刻な火傷」を発生させるという科学的根拠はない。焼夷手榴弾を除き、白リンを使用した弾薬は発煙弾や照明弾として設計されており、殺傷力は通常の榴弾や他の焼夷兵器に大きく劣る。 |
| 白リンが猛毒であることは事実だ | 毒性を保ったままの状態で白リンを広範囲へ短時間に散布する方法はない。白リンの粉塵は、空気中ではごく短時間のうちに酸化し五酸化二リンに変化するもので、この性質があるからこそ発煙弾として使われる。 |
| 多くの報道機関が「国際的に禁止する動きがある」と報じている | RAIの報道に対してガーディアンが疑問を呈した例や国際赤十字の例に見られるように、報道の信頼性や中立性には疑問がある。 |
白リン弾の期待効果および目標と、化学兵器禁止条約その他の国際法上での法的正当性に対する見解は、概ね以下のようになる。
化学弾(現在、白リンの毒性を利用することを主目的とする兵器の存在は確認されていない) 対人利用…違法。
焼夷弾(現在は主に手榴弾としての利用) 対物利用…合法。 対人利用…議論がある。白リンの使用の有無に係らず、焼夷兵器の戦闘員に対する使用は合法。 主として対物利用だが、人を巻き込む恐れがある場合…議論がある。
発煙弾 対物利用…合法。 煙覆効果を期待した対人利用…合法。 化学効果を期待した対人利用…違法。そのような利用が可能か、実際に利用されているかについては議論がある。 主として対物利用だが、人を巻き込み化学効果を発する恐れがある場合…議論がある。
白リン弾の化学的性質
白リン 人間の経口摂取による半数致死量は体重1kgあたり0.7mg程度であり、少なくとも150mgを経口摂取すれば死に至る。肝臓、心臓、また腎臓に危害を及ぼす可能性がある。 白リンは大気中で自然発火する。そのため、焼夷弾として用いられた場合には消火後も再度引火する可能性がある。 五酸化二リン 白リンが酸化すると生じる。強力な脱水作用を有し、工業および実験室において乾燥剤として使用される。固体が人体に付着した場合、脱水作用により酸やアルカルのような腐食性を示すため、閉所での使用には注意が促される。 気体の急性吸入による最低危険レベルは0.02mg/m?とされ、これは燃料石油のガスと同じ程度である。ある程度の濃度であれば眼や鼻を刺激する。濃度の高いものを浴びると酷い咳に見舞われる可能性があるが、開けた場所で発煙弾として使用される濃度では事実上無害とされる。発煙弾の煙が原因で兵士が死亡した例は報告されていない。白リン弾の報道
白リン弾の効果や使用に関しては、以下の報道機関が報じている。
RAI 2005年
BBC 2005年11月16日
毎日新聞 2005年12月1日
ハーレツ 2006年10月22日
BBC 2006年10月22日
ロイター 2006年10月22日
産経新聞 2006年10月23日
日本経済新聞 2006年10月23日
フィガロ 2006年10月23日
AP通信ヤフーニュース 国際赤十字の認識
◇出典: フリー百科事典ウィキペディア(Wikipedia)『白リン弾』より取得日:2009-02-19
白リン弾の関連サイト
- 白リン弾 - Wikipedia
白リン弾(はくリンだん)とは、手榴弾、砲弾、爆弾の一種で、 ... 陸上自衛隊では、白リン弾を発煙弾としてのみ装備している。 - 白リン弾 - Wikipedia
陸上自衛隊では、白リン弾を発煙弾としてのみ装備している。 - 燃える雨-白燐弾についてのまとめサイト-
イラク・ファルージャ - ことば:白リン弾 - 毎日jp(毎日新聞)
お使いのブラウザがJavaScriptがオフになって ... トップ > ニュースな言葉 > 記事. ニュースな言葉. 文字サイズ変更. 小. 中. 大. ブックマーク. この記事を印刷. 白リン弾. 白リン弾. 空気と反応して発火、発煙する兵器。 - 20051212イラク米軍「白リン弾」で無差別攻撃 民間人犠牲 仁比議員 ...
... で二千五百度もの高温で百五十メートルの範囲で人も動物も焼き尽くす「白リン弾」の使用が最近明らかになったことを指摘。 - イスラエル軍、白リン弾使用か | 日テレNEWS24
イスラエルによるパレスチナ自治区ガザへの空爆で、空気と反応して発火し、人に当たるとヤケドを負う危険性のある兵器「白リン弾」が使われている可能性があることがわかった。 - ゲンダイネット
ここにきてヤリ玉に挙がっているのが、「白リン弾」の使用だ。 - 人類猫化計画 自然災害と戦争(その2)
... white phosphorous attack(白リン弾攻撃)を受けて黒焦げにされた少女たちの写真も添えられている。 - 東富士で米軍実弾砲撃演習/白リン弾の土壌調査要請/静岡県民の会
「県民の会」の埋田昇二、大橋定夫両代表は、演習監視結果を報告し「最大の特徴はイラク戦で使用された残虐な白リン弾が三百六十五発(全体の発射弾数千七百九十二発の二割)も撃ち込まれたことだ。 - 155mm白リン煙幕弾M110‐ニコニコ動画(ββ)
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