稲光

住宅近郊への落雷

雷(かみなり)とは空と地、または空と空の間に起きる大規模な放電現象であり、閃光と轟音を伴う。自然現象の一種であり主に天気が雨、雪、霰、雹の場合に発生しやすい。稲妻(電、いなずま/いなづま)と呼ぶこともあり、古語や方言などではいかずち、ごろつき、かんなり、らいさまなどの呼び名もある。

稲光の表現

雷鳴を伴わない雲と雲間の稲光(2008年8月28日22:48東京上空

雷の光を「雷光(らいこう)」と呼ぶ。「雷」「かみなり」は季語としては夏を表す。

雷の事を稲妻(いなずま:古来の表記は「いなづま」)とも呼び、稲妻の光を稲光(いなびかり)と呼ぶ。稲妻は秋の季語である。稲妻・稲光の語源については日本では稲が開花し結実する旧暦(太陰暦)の夏から秋のはじめにかけて雨に伴い雷がよく発生するため、また落雷した田では稲が良く育ったため稲穂は雷に感光することで実るという理解が生まれ、雷を稲と関連付けて稲の「つま(=配偶者)」と解し「いなづま」あるいは「いなびかり」と呼ぶようになったといわれている。

稲光の雷と神話

雷神

古来より、雷は神と結びつけて考えられることが多かった。

ゼウスギリシャ神話

ユピテルローマ神話

トール北欧神話

インドラバラモン教)

建雷命(日本神話)

雷神・雷さま(日本民間伝承)

雷公(中国)

ギリシャゼウスローマユピテルジュピター)は天空の雷神であり最高神である。マライ半島ジャングルに住むセマング族でも雷は創造を司る最高神であり、インドシナから南中国にかけては敵を滅ぼすため石斧をもって天下る神として落雷を崇める。欧米ではカシが特に落雷を受けやすい樹木とされたのでゼウスユピタス北欧神話トールの宿る木として崇拝した。欧州の農民は住居の近くにカシを植えて避雷針がわりとし、また犬、馬、はさみ、鏡なども雷を呼びやすいと信じたので雷雨が近づくとこれらを隠す傾向があった。雷雨の際に動物が往々紛れ出ることから雷鳥や雷獣の観念が生まれた。アメリカ・インディアンの間では巨大な鳥を雷獣と考え、その羽ばたきで雷鳴や稲妻が起こると伝えられた。

日本神話においても雷は最高神という扱いこそ受けなかったが、雷鳴を「かみなり(神鳴り)」ということからもわかるように雷を神々のなせるわざと見なしていた。天津神の1人で天孫降臨の前に葦原中国を平定したタケミカヅチ建御雷武甕槌)はそういった雷神の代表である。雷(雷電)を祭った神社に「雷電神社板倉雷電神社など)」「高いかづち神社」などがあり、火雷大神(ほのいかづちのおおかみ)・大雷大神(おおいかづちのおおかみ)・別雷大神(わけいかづちのおおかみ)などを祭神としている。

日本では方言で雷を「かんだち」とも言うが、これは「神立ち」すなわち神が示現する意である。先述した稲妻の語源が示すとおり、雷は稲と関連づけられている。霊異記や今昔物語にあるように雷は田に水を与えて天に帰る神であったため、今でも農村では雷が落ちると青竹を立て注連縄(しめなわ)を貼って祭る地方がある。

雷神は平安時代になると、天神の眷属神として低い地位を占めるようになった。

また雷が起きると、落雷よけに「くわばら、くわばら」と呪文を唱える風習がある。これは、菅原道真の土地の地名であった「桑原」にだけ雷(かみなり)が落ちなかったという話に由来する。平安時代に藤原一族によって流刑された道真が恨みをはらすため雷神となり宮中に何度も雷を落とし、これによって藤原一族は大打撃を受けた。このとき唯一、桑原だけが落雷がなかったので後に人々は雷よけに「桑原、桑原」ととなえるようになったといわれる。

雷神は古くから美術に表現されてきたが絵では京都建仁寺俵屋宗達筆障壁画、元禄時代の尾形光琳の作など、彫刻では日光東照宮、京都三十三間堂などのものが有名である。

稲光の発生の原理

上空と地面の間、または上空の雷雲内電位差が生じた場合の放電により起きるとされる。雷を発生させる雲を雷雲と呼ぶ。雲内での放電を雲間放電(cloud to cloud lightning:CC; inter cloud lightning:IC; cloud flash:CF)、雷雲から地面への放電を対地雷(cloud to ground lightning:CG)と呼ぶ。対地雷には上向きと下向き、正極性(+CG)と負極性(-CG)の分類があるから対地雷は結局4種類ある。

ただし、近年(1980年代?)ではレッドスプライト等の雷雲上空の発光現象も発見されている(中間圏発光現象)。

雷の発生原理は、主に以下のような説で説明されている。

稲光の雷雲の発生

雷雲

地表で大気が暖められることなどにより発生した上昇気流は湿度が高いほど低層から飽和水蒸気量を超えて水蒸気が発生して雲となり、気流の規模が大きいほど高空にかけて発達する。

この水蒸気は高空に達すると氷結して水滴やあられ、氷の結晶となり上昇気流にあおられながら互いに激しくぶつかり合って摩擦されたり砕けたりすることで静電気が生じる。この時、雲の上層には正の電荷が蓄積され下層には負の電荷が蓄積される。

急激な上昇気流により低層から高空まで形成される雷雲は主に積乱雲などで構成され、熱雷(俗に夏雷)と呼ばれる。同じ積乱雲でも寒冷前線上などに発生する場合、また温暖前線などで同様の原理が発生した場合の雷は界雷と呼ばれる。上昇気流が台風などによる場合は、渦雷(うずらい)と呼ばれる。なお前線に向かって湿った空気が流れ込むことにより発生した雷など、熱雷と界雷の両方の特性を併せ持つものは熱界雷と呼ぶ。

稲光の稲妻

雷のアニメーション

上層と下層の電位差が拡大して空気の絶縁の限界値を超えると電子が放出され、放出された電子は空気中にある気体原子と衝突してこれを電離させる。電離によって生じた陽イオンは、電子とは逆に向かって突進し新たな電子を叩き出す。この2次電子が更なる電子雪崩を引き起こし、持続的な放電現象となって下層へ向って稲妻が飛んでいく。

また下層の負電荷が蓄積されると、今度は地上では正の電荷が静電誘導により誘起される。この両者の間でも、電位差がある一定を越えると放電が起きる。

これらの放電は、大気中を走る強い光の束として観測される。これは日本では稲妻と呼ばれ、地上との間の放電を特に落雷と呼ぶ。1回の放電量は数万?数十万アンペア、電圧は1?10億ボルト電力換算平均約900ギガワット(=100ワット電球90億個分相当)に及ぶが時間にすると1/1000秒程度でしかない。時間単位の電力に換算するとおよそ0.4kW/hであり、家庭用省電力エアコンが1時間消費する電力に匹敵する。

この間を細かく分けると、落雷(負極性の雷)においては雷雲から最初に伸びる光の弱い先駆放電ステップリーダー)、大地側から迎えるように伸びるストリーマー(線条・先行放電)、両者が結合して大量の電荷が本格的に先駆放電路に流入する主雷撃の3段階に大別され、電位差が中和されるまで放電が続く。

主な夏雷は電子は雲から地表に、電流は地表から雲に流れる(電流を参照)。冬雷の場合はその性質上これとは逆に電子は地表から雲に、電流は雲から地表に流れる。

稲光の雷鳴

放電現象が発生したときに生じる音である。 正確には雷が地面に落下したときの衝撃音ではなく、放電の際に放たれる熱量によって雷周辺の空気が急速に膨張し、音速を超えた時の衝撃波である。

稲光の雷の被害

落雷で折れ、幹が裂けた木

雷の被害は直撃雷側撃雷誘導雷侵入雷等に大別される。

直撃雷とは雷の電撃を直接受ける状態、側撃雷直撃雷の周りに発生する高い電位差をいう。誘導雷とは、雷雲に発生した静電エネルギーと対になる地面に誘起される電位差をいう。侵入雷とは誘導雷側撃雷と似ているが、これは建物の接地極接地線を介して建物内部に影響を及ぼす現象である。

感電などによる人的な被害。雷雲発生時に野外でのスポーツゴルフなど)や作業中に雷撃を受け、命を落とすことが多い(直撃雷側撃雷)。

変電施設などへの落雷による停電(直撃雷側撃雷誘導雷)。

送電線への誘導雷に伴う、異常電流の発生(雷サージ)による電気機器の損傷。

上空を飛行中飛行機に落雷し、機体に穴が開いたことがある。

家などの建造物に落雷し、火災になったことがある。

家屋やその周辺に落雷し屋根や壁、窓ガラスなどが大きく破損することがある。これは稲妻周辺の空気が瞬時に膨張したためと考えられる。

雷が直接地面に落ちた場合その地点に大きな穴を生ずることがあるが、これは雷による大電流により内部にある水分が爆発的に蒸発することによる(水蒸気爆発)。

稲光の雷が落ちる場所・人的被害を受ける状況

雷は大抵は高いものに落ちやすいが、条件によっては高さも無関係に落ちる。事実、海やサッカースタジアムフィールドなどの広い場所に落ちている(雷ストリーマを参照)。

金属製品を身につけているかどうかは関係ない(以前は金属製品を持たないほうがよいとされてきたが、近年関係ないことが明らかになり逆に身に付けている方が金属が雷の通り道になり、助かる場合もある)。

家への落雷の場合、電化製品や電気を通すものを介して感電あるいは発火する。

送電線への場合はアークホーンなどを通し、一時的に当該回路が停電になる(瞬停)。

公園などにある屋根付きの壁のない簡単な休憩所に落ちた場合、柱に近い位置にいると屋根から伝っていた雷が飛び移って感電する。

稲光の雷対策

雷は大気中に発生する現象としては必ずしも大きな大気の撹乱を伴わないため、詳細な予報は困難であり天気予報などにおいても予測の範囲内で注意を呼びかける(雷注意報)などにとどまっている。電力会社各社は、独自に雷雲や落雷の観測システムを持っている。

稲光の近くに建物や自動車がある場合

雷対策として最も確実なのは、雷注意報が出ているときは野外に出ないことである。出ざるを得ない場合、または出てしまった場合は遠くで雷雲が見えたら室内(あるいは停止し窓を締め切った自動車内など)に逃げ込む。雷雲は速く発達するからである。雷鳴が聞えてからでは遅い。

稲光の野外の場合

45度以上に見上げる高さの木がある位置は、木が避雷針の役割を果たしてくれるので安全とされる。ただし幹や枝などの2m以内にまで近づくと木に落ちた雷に側撃雷が発生する可能性があり危険なので、適度に離れている必要はある。

雷が近い場合、走って逃げたからといって落雷を避けられるとは限らない。雷雲が発生させる電位差広範囲にわたるからである。運良く直撃を避けられて落雷地点多少離れていても、地面に落ちた雷はある程度の距離ならば地表を伝わってきて人は強い衝撃波を受ける。この時、足を開いていると「片脚>胴体>反対の脚」と体内を電流が流れ感電する可能性が高くなるので脚は閉じているほうが良いとされている。更に、身をできる限り小さくして座ると効果はあるとされている。

稲光の避雷針

落雷の原理として、地上と上空との電位差から生じることが分かっている。このことを活かして適切な位置に避雷針を設置して空中放電し、あらかじめ地上と上空との電位差を軽減するという処置がとられる。建築基準法33条では、「高さ20メートルをこえる建築物には、有効に避雷設備を設けなければならない。ただし、周囲の状況によつて安全上支障がない場合においては、この限りでない。」としている。なお避雷針には保護範囲というものがあり、その範囲の外にあるものまでは保護することはできない。一般的な目安としては、避雷針の先端を(水平から)45度の以上の角度で仰げる範囲(の円錐形の空間)に入れば安全だとされていた。しかしながら最近の研究の物理的見地から見た通常の避雷針保護角回転球体法により求められるラッパのような形状の保護角でしかなく、この形状よりはみ出る45度以上の円錐状部分では雷の保護はできない。しかしながら国会議事堂やその他文化財のように長い形状の建物、高い形状の建物の場合、棟上げ導体などを使用し広い保護範囲を得る事が行われている。また雷ストリーマを発生させ、45度の角度よりもはるかに高い保護角を持つようにした避雷針なども開発されている。

したがって通常の避雷針をビル等に設置した場合、設置位置などによっては避雷針ではなく建物の角に落雷することもある。

稲光の雷サージ対策

家庭などにおいて雷サージによる家電製品やPC等の故障を防ぐためには、雷の時は電源ケーブル電話線コンセントから抜いておく事が望ましい。また同被害を軽減するために、サージプロテクタというコンセント型の器具も販売されている(同器具の詳細については、避雷器項参照)。

稲光の雷ストリーマによる誘雷

ストリーマによる誘雷に適した形状(小形放電電極下部集電電極)をした避雷針などに、予め別途回路により雷ストリーマを発生させておき雷を誘導する方法である。

稲光のレーザー誘雷

雷雲に向けて強力なパルスレーザーを当てて稲妻の通り道となるプラズマを発生させ、稲妻を安全な場所へ誘導することが可能である事が実験で実証されている。送電線鉄塔への落雷が原因の停電を防止する手段として期待されている。

稲光のロケットによる誘雷、消雷

ロケットに電線を繋げて打ち上げ、雲の上下に生じた電位差を電線を通じて放電する事により落雷を防ぐ。電線は放電によって蒸発する。

稲光の落雷実験

日本工業大学の超高圧放電研究センターでは300万ボルトインパルス電圧発生装置による人工的な落雷実験が行われている。

稲光の各地の雷

世界の雷の発生頻度

稲光の北関東の雷

北関東地方群馬県栃木県)では特に夏の雷が多く「雷の銀座通り」等ともよばれる。上州(群馬県)の名物といえばかかあ天下に空っ風、それに雷である。また、やはり雷の多い宇都宮市では地域の愛称としての「雷都」(らいと)が土産物の菓子の名前などで使われている。

稲光の北陸地方の雷

北陸地方や新潟県などの日本海沿岸では、冬季に目立って多く発生することから冬季雷とも呼ばれる。落雷数こそ少ないものの発生のメカニズムから夏季の雷より数百倍エネルギーを持つものが確認されるほか、一日中発雷することが多く雪やあられを伴うことが多い。また、はっきりとした落雷が無くても瞬間的な停電などの被害が出ることもある。海岸線から35km以上の内陸部では少ない。

また冬季の雷には愛称があることが多く、雪起こし、ぶり起こし、雪雷などのような方言がみられる。

稲光の雷と天気図

雷の天気記号(日本式)

日本式天気図においては、「過去10分以内に雷電または雷鳴があった状態」を雷としている。また、特に地上への落雷を伴う場合は「雷強し」とすることもある。

稲光の雷に関連する故事成語

付和雷同

青天の霹靂

地震、雷、火事、親父

電光石火

天沢火雷風水山地

また俳句においては「雷」「遠雷」「軽雷」は夏の季語、「寒雷」は冬の季語、「春雷」は春の季語である。

稲光の雷に関連する作品・命名等

稲光の小説

「雷桜」(宇江佐真理

雷獣伝説〈1〉闇の咆哮」/「雷獣伝説雪雷篇〉」(斉藤英一朗)

「雷神、翔ぶ」(丸山健二

「雷神の剣 ? 介錯人・野晒唐十郎」(鳥羽亮

「雷(いかづち)の娘シェクティ」(嵩峰龍二

「遠雷」(立松和平

稲光の音楽

四季(ヴィヴァルディ

交響曲第6番「田園」(ベートーヴェン

幻想交響曲ベルリオーズ) 

雷鳴と稲妻(あるいは「雷鳴と電光」。ヨハン・シュトラウス2世)

アルプス交響曲リヒャルト・シュトラウス

雷鳴-out of kontrol-(m.o.v.e)

駆け抜ける稲妻(倉木麻衣。アルバム「FUSE OF LOVE」に収録)

稲光の自動車・オートバイの車種名

トヨタ・カローラレビン - 「レビン」(Levin)は、英語で「稲妻」を意味する語

トヨタ・スプリンタートレノ - 「トレノ」(Trueno)は、スペイン語で「雷鳴」を意味する語

ヤマハ・YZF1000RサンダーエースThunderAce

ヤマハ・YZF600RサンダーキャットThunderCat

スズキ・イナズマ

aprilia・TUONO-1000 - 「トゥオーノ」(Tuono)は、イタリア語で「雷鳴」を意味する語


稲光の鉄道車両

JR貨物EH200形電気機関車の愛称、「ECO-POWER ブルーサンダー

JR貨物EF510形電気機関車の愛称、「ECO-POWER レッドサンダー

稲光の航空機

雷電(旧日本海軍の戦闘機

紫電(旧日本海軍の戦闘機

紫電改(旧日本海軍の戦闘機

震電(旧日本海軍の戦闘機

P-38ライトニングアメリカ陸軍戦闘機

F-35ライトニングII(アメリカ空軍・海軍・海兵隊戦闘機

P-47サンダーボルトアメリカ陸軍戦闘機

A-10サンダーボルトII(アメリカ空軍攻撃機

F-84サンダージェットアメリカ空軍戦闘機

F-105サンダーチーフアメリカ空軍戦闘爆撃機

イングリッシュ・エレクトリック ライトニングイギリス空軍戦闘機

MC.202フォルゴーレイタリア語で稲妻の意、イタリア空軍戦闘機

サーブ 37 ビゲンスウェーデン語で稲妻の意、スウェーデン空軍戦闘機

稲光の人物

イヴァン雷帝

雷電為右衛門

稲光のその他

エクレア西洋菓子

雷おこし(菓子)

電撃戦

雷音寺

雷切

雷撃(魚雷攻撃

稲光の易

八卦(はっか、俗にはっけ)の中の「震」は雷に相当する。木気であり、方角としては東を指す。

稲光の参考文献

日本大気電気学会編 大気電気学概論  オーム社、2003年、ISBN 4-339-00751-X

稲光の出典・脚注

◇出典: フリー百科事典ウィキペディア(Wikipedia)『稲光』より
取得日:2008-09-10

稲光の関連サイト

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